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非水素結合性ゲルの開発とゲル生成機構の解明に成功
~導電性ゲル,再生医療材料への応用に期待~

 北里大学大学院・理学研究科の長谷川真士講師,芳賀汐理(理学部化学科4年/研究当時),真崎康博教授,東京都立大学大学院理学研究科の西長亨准教授は,電気伝導や高屈折率材料に応用可能なセレノフェン【注1】を環状に結合させたセレナカリックス[4]セレノフェン【注2】の効率的な合成法を開発し,その分子の自己集合によるゲルを開発しました。
 有機化合物から構成されるゲルは,ナノ~マイクロスケールの網目状の構造を持ち,大量の水や有機溶媒を含むことができます。これを利用して,廃油の凝固剤から再生医療に用いる材料に到るまでの幅広い応用がなされています。
 一般に,ゲルは水素結合【注3】などの弱い分子間の結合を利用することで線状の構造を構築し,その間に溶媒などの液体を取り込みます。
  本研究では,水素結合に替わり重原子であるセレンSe【注4】の分子間相互作用を利用した,従前にない新しい機構で生成するゲルを開発しました。水素結合によらない設計によるゲルを開発したことで,電気伝導や光伝導を担うπ電子が近接し,新しい医療用電極やアクチュエーターを目指した機能性ゲルの開発が加速します。 本研究成果は,米国化学会のOrganic Letters電子版に掲載され,カバーピクチャーに採用されました。

図_(a)セレナカリックス[4]セレノフェンの分子構造、(b)ゲルの様子と電子顕微鏡写真

ポイント

1)一段階で環状のセレナカリックス[4]セレノフェンを合成する方法を開発しました。
2)トルエン中でのゲル化を達成し,従前にない新しいゲル生成機構を見出しました。
3)本研究成果は電気伝導や光伝導を示す新しいゲル材料として各種応用展開が可能です。

論文情報

掲載誌: Organic Letters 電子版(米国化学会)
論文名: Selenacalix[4]selenophene: Synthesis, Structure, and Gel Formation of Cyclic Selenoether of Selenophene (セレナカリックス[4]セレノフェンの合成と構造およびゲル形成)
著 者: 長谷川真士(北里大学講師,責任著者),芳賀汐理(北里大学4年),西長亨(東京都立大学准教授),真崎康博(北里大学教授)
DOI: 10.1021/acs.orglett.0c00839
※本研究は,文部科学省科研費 (JP16K17871, JP18Ks05092)および北里環境科学センター助成研究の研究支援によって実施されました。

用語解説

【注1】セレノフェン (Selenophene)
 化学式C4H4Se,分子量131の化合物で,炭素原子とセレン原子(後述)が5角形状に繋がった分子構造を持つ(下図)。セレノフェンを組み込んだ有機分子は,電子材料や高屈折率を持つ光学材料への応用が報告されている。
【注2】セレナカリックス[4]セレノフェン (Selenacalix[4]selenophene)
 今回,著者らが新しく開発した分子の名称。数字の[4]はユニットの数を表す。類似の構造にカリックスアレーン(calixarene,下図)があり,超分子化学の分野で利用されている。
【注3】水素結合 (Hydrogen-bond)
 電子豊富なドナー原子上の孤立電子対(酸素O, 窒素N, フッ素Fなど)と,水素 (H) 原子で作る分子間結合相互作用。有機化合物を構成する共有結合よりずっと弱い。DNAの形成やタンパク質の基本構造を規定する重要な相互作用である。
【注4】セレン (selenium)
 原子番号34の元素。元素記号はSe。酸素O, イオウ Sに代表されるカルコゲン元素の一つで,生命維持に必要な必須元素の一つ。わが国の生産量は世界一であり,数少ない輸出資源となっている。含有する電子数が多く原子半径が大きいため,固体中の電気伝導や高屈折率に有利となる。

問い合わせ先

研究に関すること

北里大学理学研究科
長谷川真士
〒252-0373 神奈川県相模原市南区北里1-15-1
Tel: 042-778-8158
e-mail:masasi.h"AT"kitasato-u.ac.jp

報道に関すること

学校法人北里研究所 総務部広報課
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e-mail:kohoh“AT”kitasato-u.ac.jp
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