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地下水中の硝酸性窒素の起源を推定する手法の改善
―沖縄島南部地域琉球石灰岩帯水層での試み―

 熊本大学大学院先端科学研究部の細野高啓教授、琉球大学農学部の安元純助教、総合地球環境学研究所新城竜一教授及び北里大学海洋生命科学部の安元剛講師らは、総合地球環境学研究所のLINKAGEプロジェクト(陸と海をつなぐ水循環を軸としたマルチリソースの順応的ガバナンス:サンゴ礁島嶼系での展開)の研究活動の一環として、沖縄県本島琉球石灰岩帯水層において採水した地下水試料の安定同位体比を分析及び地域で使用されている様々な種類の肥料及び土壌がもつ安定同位体比との比較を行い、現在、同地域の一部で確認されている地下水硝酸性窒素の高まりは、従来指摘されていた化学肥料の施肥に加え、堆肥の保管場所からの供給が原因であることを突き止めました。従来は肥料など起源物質そのものが持つ同位体比を指標に起源推定が試みられてきましたが、今回の研究の結果、圃場(ほじょう)の60cm以深で採取された土壌を用いることで、より正確な評価が可能になることが明らかになりました。こうした研究の成果は、他地域における同様の問題解決に役立てられると共に、今後の水資源の保全やガバナンスの観点から重要だといえます。本研究は、水文分野の専門誌「Journal of Hydrology」に、2023年3月8日付けでオンライン公開されました。また、本研究は以下の支援を受けて実施したものです。
・JST RISTEX プロジェクト(JPMJRX19IA)
・総合地球環境学研究所LINKAGEプロジェクト(RIHN 14200145)
・文部科学省 科学研究費助成事業 基盤研究A(22H00563)

発表のポイント

・地下水の硝酸性窒素濃度の上昇は最も広範かつ深刻な地下水汚染として知られています。効果的な汚染対策へと結びつけるため、その原因を特定する手法の開発が必要とされています。
・従来は、化学肥料など窒素の起源物質そのものが持つ安定同位体比を指標とすることで窒素起源の推定が試みられてきました。今回、新たに「土壌」試料を指標に用いることで、より的確な窒素起源の評価が可能となることが判明しました。
・沖縄島南部地域の琉球石灰岩地域の一部地域では、これまでは化学肥料の施肥により地下水中の硝酸性窒素濃度が高まっているとの指摘がなされていました。今回の評価を通し、堆肥の保管場所やその方法についても問題があることが明らかになりました。本研究の成果は、今後の地下水資源の保全と持続的な利用と管理に役立てられると考えられます。

論文情報

【掲載誌】Journal of Hydrology
【論文名】Effective use of farmland soil samples for N and O isotopic source fingerprinting of groundwater nitrate contamination in the subsurface dammed limestone aquifer, Southern Okinawa Island, Japan
【著 者】Oktanius Richard Hermawan*, Takahiro Hosono, Jun Yasumoto, Ko Yasumoto, Ke-Han Song, Rio Maruyama, Mariko Iijima, Mina Yasumoto-Hirose, Ryogo Takada, Kento Hijikawa, Ryuichi Shinjo
(*責任著者)
【DOI】10.1016/j.jhydrol.2023.129364

問い合わせ先

学校法人北里研究所 総務部広報課
〒108-8641 東京都港区白金5-9-1
TEL:03-5791-6422
E-mail:kohoh“AT”kitasato-u.ac.jp
※E-mailは上記アドレス“AT”の部分を@に変えてください。

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